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旅の反芻


2021年、今年の年賀状はチェコのミクロフのちいさな湖の写真にした。

ミクロフを発つ日の早朝、町はずれのこの湖までさんぽした時のことが忘れられない。

前日に立て看板の地図をみて、ふと行ってみたいと思った。


湖は想像より小さく、けれど水は鏡のようにはりつめていて、ほんとうに荘厳だった。こわいくらいに。

いまでもたまにグーグルマップでこの湖を訪れる。便利な時代…こういうのは旅にでてこそ、自分の足で踏みしめてこそだとは思うが、自分の行った場所が幻ではなかったんだと確認するために見ているのかもしれない。

あの場所で今この瞬間も人は暮らし、水は流れ、風がふく。


どんなに離れていても、あの場所はたしかにあって、私と同じ時間のなかを過ぎゆく。

ミクロフに吹いた風は、私の前を過ぎ去っただろうか。

風にしるしをつけられたなら。

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